ハイボール、ジントニック、マティーニ、モスコミュール…
カクテルは必ずベースとなるお酒とジュースなどを混ぜ合わせて作られています。
今回はこのベースとなるお酒のなかでもジンについて詳しく解説を行います。
そもそもバーやカクテルが何なのかいまいちよく分からないという方は、まず以下の記事をお読みいただけますと幸いです。
まずはベースとなるお酒にはどんなものがあるか?
いきなりではありますが、ベースとなるお酒の代表例を列挙しようと思います。
まずはこの6つを覚えるだけで十分ではないかと思います。
・ジン
・ウオッカ
・ラム
・テキーラ
・ウイスキー
・ブランデー
このほかにはリキュールをベースにしたカクテルもあります。
リキュールってなんだよって方がほとんどかと思いますが、リキュールとは、ジンやウオッカなどの蒸留酒に薬草や果汁を加え作ったお酒のことです。
なぜジンやウオッカを例として出したかというと、ウイスキーやブランデーに比べてジンやウオッカはクリアで雑味が少ないお酒であるため、リキュール製造に適していると考えられているからです。
代表的なリキュールとしては、最近ブームが来ている薬草を使った「アブサン」、オレンジの果皮を用いた「キュラソー」があります。
しかし、リキュールはかなり種類も多いため、まずは上記の6つのお酒の存在を覚えていただければ十分であると考えています。
ジンについて
個人的にはカクテルを語る際には、ジンを抜いて語ることはできないと思っているくらいカクテルを作る際には欠かせないお酒となっています。
ジンは焼酎などと同じで蒸留酒(スピリッツ)というジャンルのお酒です。
そもそも蒸留酒とはなんなのか。簡単に言ってしまえば、「ビールやワインなどの醸造酒を蒸留することで、さらにアルコール度数を上げたお酒」のことです。
醸造酒…原料となる大麦やライ麦を糖化し、酵母菌の働きでアルコール成分を発生させるお酒。
蒸留酒…醸造酒をさらに蒸留(中学校の理科の実験でやったやつです! 沸騰させて成分を分離・濃縮することです)させることで生成するお酒。
まとめるとこのような形になります。
とりあえずジンはこの蒸留酒(スピリッツ)にあてはまる!ということを覚えていただければと思います。
ジンのボタニカル
ジンの特徴として「ボタニカル」があります。
ボタニカルとは、薬草に含まれる成分でこれがジン独特のさわやかな味わいを生み出しています。
蒸留をする際に、どのボタニカルを加えるか、またネズの実(ジュニパーベリー)を加えるかでジンの風味は大きく異なることになります。
ちなみにネズの実(ジュニパーベリー)がジンの語源。ジン自体イギリスを中心に製造されているお酒ですので、英語が変化していく中で「ジン」にまで落ち着いたようです。
ドライジンについて
産業革命期のイギリスで作られ始めたジンを「ドライジン」あるいは「ロンドンジン」といいます。「ドライジン」は、ジンの中でも歴史があり、現在でも多くのバーで使用されているため、ジンのなかでもスタンダードと考えられるかと思います。
ドライジンの有名銘柄をいくつかご紹介します。
・ビーフィーター
・ゴードン
・タンカレー
この3つは定番中の定番です。ちなみに最近ゴードンはパッケージが変わり、以下のようなものになりました。
ビーフィーターのパッケージの特徴は、赤いキャップに衛兵のイラスト、タンカレーの特徴は、鮮やかな緑色のボトルです。
ゴードンは黄色ですので、この色使いにもなにか意味合いがあるのかもしれません。
目が離せないクラフトジンの世界
ジンの中でも最近流行しているのは、「クラフトジン」です。
ジンはウイスキーなどに比べても熟成期間が短いため、日本酒の酒蔵や焼酎メーカなどがクラフトジンの製造に乗り出しています。中でも面白いのは養命酒で有名な養命酒製造が作っているクラフトジン「香の森」です。少し養命酒っぽさを残しつつ深みのある味わいを楽しむことができる面白いクラフトジンです。
また地域の特産品を生かしたジンなども誕生しており、近年クラフトジンは大きなブームとなっています。
皆さんも自分好みのクラフトジンを探してみるのも楽しいのではないでしょうか。
ジンベースのカクテルについて
まずはジンの概要についてまとめましたが、本題はここからです。
ジンはウイスキーやブランデーに比べてすっきりとした味わいのため、カクテルのベースとして使用するには非常に適したお酒といえます。そのため、ジンベースのカクテルは有名なものが多いです。
最初にご紹介するのはやはりジントニック
ジントニックというと、最近は居酒屋でも飲むことができるカクテルの中でも定番中の定番です。
作り方としては、氷を入れたグラスにジンとトニックウォーターを入れてライムを絞って完成するビルドタイプのカクテルです。誰にでも作ることができるカクテルですが、非常に奥深いカクテルでもあります。
まずはどのようなグラス、氷を使うか。ベースとなるジンをビーフィーターにするのか、タンカレーにするのか、はたまたクラフトジンを使うのか。ライムは新鮮なものを使えるか。数あるトニックウォーターのなかでも何を使うのか…
少しの違いでカクテルの味は大きく変わります。そして申し訳ないですが、オーセンティックバーでジントニックを飲むと居酒屋のジントニックは飲めなくなります。それだけどのバーもこだわりを持ってジントニックを提供しています。
合う合わないはあるかと思いますが、迷ったらジントニックをオーダーするのはいい選択肢だと思います。初めてのバーは緊張すると思いますが、ジントニックをオーダーして飲むことでクールダウンできるのではないかと思っています。
カクテルの王様、マティーニ
このカクテルも外すことができないジンベースのカクテルです。あまりカクテルに詳しくない人でもマティーニは何となく聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか?バーに行けば、自分はオーダーしなくても必ず周りで誰かがオーダーをしている超定番カクテルです。
マティーニという名は、20世紀初頭にニューヨークの超名門ホテル ニッカボッカー・ホテルにいたバーテンダー マルティーニ氏が考案したカクテルであることに由来しています。
ジンとドライベルモットをミキシンググラスの中でステアして作るステアタイプのカクテルです。最後にレモンピール(レモンの皮)を軽く絞り、オリーブを浮かべるのも鉄則です。
マティーニも誰が作るかで大きく味が変わってしまうため、自らのベンチマークのカクテルにし、色々なお店で飲み比べてみると非常に面白いと思います。
銀座のバーたか坂のマスター高坂壮一さんにマティーニをお作りいただいた際の動画もありますのでぜひご覧ください!
バーテンダー修業はここから ジンフィズ
ジンフィズとは、ジン、レモンジュース、砂糖をソーダで割るカクテルです。多くのバーテンダーがまずはジンフィズを作る練習から始めると言われています。
ジンフィズはカクテルの基本がすべて詰まったカクテルです。ジン、レモンジュース、砂糖を加えてシェイク、そしてシェイクをしたものにソーダを注ぐビルドのアクションが加わります。
前述の高坂さんの言葉を借りるなら習字の「永」の文字と同じ。カクテルづくりの基本がすべて詰まったカクテルなのです。
ジンフィズのフィズとは、ソーダの泡のはじける音を表す擬音語のようです。
そして画像でお見せしたジンフィズが黄色みがかっているのは、まさにバーテンダーのこだわりです。こちらはバーたか坂さんでいただいたジンフィズですが、シロップを使わずきび糖を使っているため黄色みが出てきます。
こうしたこだわりを垣間見ることができるのは非常におもしろいです。
私の大好きなギムレット
すみません、私のこだわりですが、ギムレットを抜いてジンベースのカクテルを語ることはできません。
ジンとライムジュースをシェイクして作る非常にシンプルなカクテルです。しかしこれまた奥深い。いかにおいしいライムジュースを作るか、いかにシェイクを行うか、場合によってはシロップを加えるがどの程度加えるか…
ギムレットもお店ごとに差が出やすいため、私のベンチマークカクテルとしており、まずはギムレットをいただくことにしています。こういった楽しみがあるのもバーならではだと思います。
ギムレットは、イギリス海軍の軍医ギムレット卿が海兵隊員の健康を配慮してジンにライムジュースを入れて提供していたことに由来します。ギムレットは「錐」の意味もあり、錐のようにシャープな味わいのあるカクテルでもあります。
ギムレットを語るうえで欠かせないのが、ハードボイルド小説の最高峰 レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」です。作中に登場する「ギムレットにはまだ早い。」(英語の原文は「”I suppose it’s a bit too early for a gimlet,” he said.」)というセリフは、物語の重要なキーワードとなっています。
映画やドラマにもカクテルは数多く登場するため、ただ飲んで楽しむだけでなく、そういったカクテルを観て楽しむというのもまた面白いのだと思います。
その他の定番ジンベースのカクテル
まだまだジンベースのジンベースのカクテルはたくさんあります。一気にご紹介していきます。
一覧表にしましたので、バーでのカクテル選びの参考にしていただけますと幸いです。
初心者の方でも扱いやすいようにシャープ、すっきりめなカクテルとやさしめ、甘めなカクテルに分けて紹介いたします。
シャープ、すっきりめなジンベースカクテル
・アラスカ
ジンと香草系リキュールのシャルトリューズを合わせて作ります。ほんのりとはちみつの風味があるものの、刺激のあるカクテルです。
・ブルームーン
ジン、レモンジュース、パルフェタムールというスミレのリキュールを合わせて作ります。香りが華やかなカクテルですが、アルコールは強めなので注意が必要です。
・ホワイトレディ
ジン、レモンジュース、ホワイトキュラソーを合わせて作ります。こちらも定番中の定番!
○○(お酒)+レモンジュース、ホワイトキュラソーという組み合わせは鉄板であるため、ベースとなるお酒をウォッカやブランデーに変えても超定番カクテルを作ることができます。
・ジンリッキー
ジンのソーダ割り。ジン本来の味わいを楽しむことができるカクテルです。
・ジンバック
ジンのジンジャエール割りです。辛口のジンジャエールで割るとすっきりとした大人な味わいになります。一方、甘口のジンジャエールで割ると、まったりとした飲みやすいカクテルになります。
・トム・コリンズ
ジン、レモンジュース、砂糖、ソーダを合わせて作ります。あれ?これって…
お気づきの方はいらっしゃるでしょうか?ジンフィズとまったく同じ材料なのです。
しかしトム・コリンズのほうが少しジンが多めとなっています。
・パラダイス
皆さん、楽園ですよ…
ジン、アプリコット・ブランデー、オレンジジュース を合わせて作ります。やや甘みがあるもののすっきりした味わいを楽しむことができるカクテルです。
・ご紹介したジントニック、マティーニ、ジンフィズ、ギムレットもシャープ、すっきりめなカクテルに当てはまります。
やさしめ、甘めなジンベースカクテル
・シンガポールスリング
シンガポールの名門ホテル ラッフルズホテルで誕生したこのカクテル。ジン、チェリーブランデー、レモンジュース、砂糖、ソーダを合わせて作ります。非常に飲みやすいカクテルであるため、初心者の方にもおすすめです。
・ピンクレディ
あの二人組のアイドルじゃないですよ笑
20世紀初頭にロンドンで大ヒットした舞台の名前を引用しています。ジン 、グレナデン(ザクロ)・シロップ 、レモン・ジュース、卵白を合わせて作ります。色合いも非常に美しく味わいだけでなく、視覚でも楽しめるカクテルです。
・オレンジ・ブロッサム
名前はかっこいいですが、ジンのオレンジジュース割りです。しかし、侮ることなかれ。オレンジジュースと相性のいいジンをうまく選ぶことで非常に深みのある味わいとなります。
・ネグローニ
イタリア生まれのカクテル。ジン、カンパリ、スイート・ベルモットを合わせて作ります。
さいごに
今回はカクテルのベースとなるお酒のなかでもジンにスポットライトを当て、ジンベースのカクテルをご紹介してきました。
正直15個に絞るのは難しくまだまだおもしろいカクテルがたくさんあります。
皆さんのおすすめジンベースカクテルも共有いただけるとうれしいです!
そしてここまでカクテルを紹介してきたものの、分からないことがあればなんでも気軽にバーテンダーの方にお聞きください。そうしたコミュニケーションを通して提供いただくカクテルは何よりもおいしいものだと思います。
皆さんのバーライフに幸あれ!!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回はウォッカ編です。お楽しみに!
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