こんにちは!Bar compass編集部の河合です。
今回は前編に引き続き、東京・銀座の「BAR GOYA」さんのマスター、山﨑 剛さん(以下、山﨑さん)に取材にご協力いただき本記事にまとめました。
前編につきましては、以下よりご覧ください!
https://barcompass.com/about_bar-goya1/
今回は、山﨑さんにはバー初心者や若い世代がバーでどのように楽しむべきか、築地で山﨑さんが営業を行っている「juiceyaSUN」について、山﨑さんが運営するYouTubeチャンネル「GOYAチャンネル」についてなどをまとめていきます。
バー初心者におすすめのカクテルも山﨑さんにお聞きしましたので、今回もおすすめカクテルを紹介後に本題をお楽しみいただきたく思います。
山﨑さん(BAR GOYA)のバー初心者におすすめのカクテル
山﨑さんにバー初心者や若い世代の皆さんへのおすすめカクテルとしてご紹介いただいたのは、「モスコミュール」。
「モスコミュール」といえば、居酒屋などでも提供されていることの多い超定番カクテル。レシピは非常に単純で、ウオッカをライムジュースとジンジャービア(皆さんご存じジンジャーエールの原型と言われている)で割ったものだ。ジンジャービアの流通の少ない日本では、代わりにジンジャーエールを用いることも多い。銅のマグカップで提供されるのも特徴となっている。
「モスコミュール」(Moscow Mule)は、直訳すれば、「モスクワ(ロシアの首都)のラバ」。ウオッカをベースとしているため、アルコールは意外と強く、後脚の強いラバに蹴飛ばされたような衝撃が来るという意味を込めているそう。
山﨑さんは、ベースとなるウオッカに前編でもご紹介した高知県産の「限界突破ショウガ」を漬け込んでいる。
いろいろと他のショウガも試してみたものの、「限界突破ショウガ」でなければ山﨑さんのモスコミュールは完成しないという。
また山﨑さんのモスコミュールはただ単にジンジャービアで割るだけではない。ジンジャービアとジンジャエール、炭酸水を最高のバランスでブレンドしている。こういった部分にも山﨑さんのモスコミュールへのこだわりが感じられる。
ここまでこだわり抜いたモスコミュール。まずいはずがない。
モスコミュールを飲みつつ、マグカップの中に浮かぶショウガをガジガジと食べていくのもこれまた最高!バー初心者の方でも楽しみやすい一杯であると私も感じた。
山﨑さんはモスコミュールを作りながらこんなことを語ってくれた。
「モスコミュールにこだわっている銀座のバーはけっこうあります。ですので、いろんなバーで試していただけるとおもしろいと思います。」
スタンダードカクテルをいろいろなバーで飲んでみて味の違いを楽しむのも、まさにバーの楽しみのひとつだ。
バーテンダーがジュース屋!?
2021年11月、築地の場外市場内に山﨑さんは「juiceyaSUN」をオープンした。なぜバーテンダーである山﨑さんがジュース屋を始めるに至ったのか。お話を伺ってみた。
「今後もコロナウイルスが蔓延することを想定して始めました。自分自身のビジネスとしても考えているものの、少しでも果物の農家さんや氷屋さん、酒屋さんなどのお役に立てればという思いがあったのがきっかけです。」
ただ単に休業するだけではなく、何とかして普段お世話になっている業者の手助けをしたい。山﨑さんの強い思いが感じられた。
また取引する業者の手助けをするだけでなく、自らのスキル向上にもジュース屋での業務が役立っていると語る。
「果物をジュースとして提供することを始めてから確実に自らのスキルが上がりました。オーダーが入ってから果物の皮をむき始めてつぶし、ジュースにしていくスピードも上がりましたし、お酒を入れずにいかにおいしいフレッシュジュースを作るかという味の調合の観点でもスキルが上がっているのが自分でも分かります。」
「juiceyaSUN」を開業したことが「BAR GOYA」へ与えた影響も大きい。果物の見る目が養えたことで、結果的に「BAR GOYA」で提供するフルーツカクテルのレベルも上がるという一種の相乗効果が得られた。
また「一杯1000円のフレッシュジュースをいかに販売していくか」についても考えさせられるものがあった。銀座のバーの単価とはまったく異なる場でどのようにフレッシュジュースを提供していくべきなのかを必死に考えることもいい経験だ、と山﨑さんは語る。
山﨑さんにとって「juiceyaSUN」もなくてはならない場所になっている。
※「juiceyaSUN」の公式ホームぺージはこちらです。
https://juiceyasun.com/
YouTubeチャンネル「GOYAチャンネル」について
山﨑さんはユーチューバーとしての側面も持っている。今年に入ってから始まった「BARレクチャーシリーズ」は、バー初心者向け内容となっており、バーをどのように利用していけばよいかなどについて語られている。(バー玄人向けには、「本気(マジ)カクテルシリーズ」を提供している。)
「これもきっかけはコロナウイルスの蔓延でした。最初の頃はあわよくば収益化も…なんていう思いもありましたが、今年からは動画を記録として残すことを意識しています。これを生かして後進の育成のツールとして役立たせていこうかなと思っています。」
バーといえば敷居が高い、入った後もどうしたらよいのかわからない人はバーテンダーが思っている以上に多い、と山﨑さんは語る。
「僕はマーケティングのセミナーにも通っているんですが、経営者が多いそのような場所でもほとんどバーに行ったことがある人はいないんです。みんな行ってみたいけどきっかけがない、特に銀座のバーは敷居が高くて入りづらいとおっしゃいます。」
バーに興味があるけど行ったことがない、行ったけど面白さが分からなかったというのは、若い世代に限った話ではない。山﨑さんは「GOYAチャンネル」を利用して幅広い世代の方々にバーの魅力を伝えようと日々企画の検討などを行っている。
「バーのモード」の山﨑さんをYouTubeでぜひ体感してほしい。
バー初心者へのすすめ
最後にバー初心者の方がバーを楽しむためにはどうしたらよいのか、プロのバーテンダーの山﨑さんにも今回お話を伺ってみた。
「まず知らない方の家にお邪魔する気持ちがあるかないかがすごく大事だと思っています。これは僕たちが上に立ちたいとか思っているわけでなく、『初めまして、よろしいでしょうか。』というスタンスで来ていただけるとこちらもすごくお迎えしやすくなります。」
山﨑さんは、「初めまして」の一言をおっしゃってくださるかどうかが重要だという。こうした一言がお客様側から発せられることで、打ち解けやすさがまったく異なってくる。
バーはある意味で「大人の社交場」。そういった空間にバーに慣れていない方や若い方が足を踏み入れる際には、一種の謙虚さのようなものがあるとさらによいと山﨑さんは語る。
「うちは看板にGOYAとしか書いていないので、何のお店か分からない人が多いと思うんですよ。何かきっかけがあってここに来店することがほとんど。そのきっかけを最初におっしゃっていただけるだけで馴染みやすさが違いますね。」
バーに慣れている慣れていないにかかわらず、この謙虚さは非常に重要であることも山﨑さんは語ってくれた。自らがバーを楽しむだけでなく、オーダーに配慮をしたりするなどよい空間を作ろうという意識をもったお客様がいることで空間が成り立つ。これが山﨑さんにとって「すごく心地のいいもの」であると語ってくれた。
もてなされる側の流儀
バーに少しずつ慣れてくると、もてなされる側の作法のようなものが身についてくる。これもバーを楽しむ醍醐味であると山﨑さんは語ってくれた。
「常連さんがこういうときにはこういうオーダーをするんだとか、先に帰るときには『お先に!』って言って帰るんだとか、こういうことを知っていくと善行の連鎖が起こってくるんですよ。
今までも常連さんが若い方に『お先に』って言って帰ってたら、その次にその若い方が「お先に失礼します」って一言言って帰っていったことがあったんですよ。バーでこういう作法が身についてくるのはいいですよね。」
バーはまさに「大人の学び舎」でもある。もてなされる側に大きな学びがあるのはもちろん山﨑さんがお客様から学ぶことも多いという。偶然ではあるがその場に集った者たちで、こうしたよい連鎖が起こしていく楽しさを感じられるのはまさにバーの醍醐味と言えるだろう。
こうしたバーの空間づくりなどに大きな影響を与えているのが日本の伝統文化である「茶道」である。山﨑さん自身も茶道の稽古に通っている。
「バーの世界って茶道から影響を受けているものが多いんです。今一度茶道のあり方などをバーの中に取り込んでいくことも大切だと思うんですよね。
例えば、お茶の世界にはお正客(しょうきゃく)というものがあります。お正客はもてなされる側のリーダーのような存在です。必ずこのお正客が主になるので、お正客が連れてきたゲストはお正客のことをたてながら場を楽しむのがマナーです。ゲストがお正客のおかげでこの場に来ることができた、という思いを常に持つことで一座がひとつになってきます。」
バーの世界にもこのようなお茶の文化があって然るべきではないか、と山﨑さんは考える。知り合いの方にバーに連れてきてもらった際には、その方のおすすめなどに委ねてオーダーをしていく。そうすることで、よりこの空間を楽しめることがあるのではないか、と語る。こういった場づくりはお茶の世界とも密接につながるものだ。
「オーセンティックバーも以前と比べれば、一般のお客様に合わせて敷居を下げている部分があると思っています。でもお茶の世界の敷居は下がりません。なんでも視点を下げればいいというものではなく、より高い視点での空間づくりなども行っていかなければいけないと思います。」
日本古来の総合芸術である茶道の文化をバーの空間づくりなどに取り入れていくことで、日本文化の後世に継承していくことにもバーテンダーは貢献ができるのかもしれない。
取材後記
今回は山﨑さんから多くのお話をお聞かせいただきました。
私が取材を通してもっとも感じたのは、山﨑さんの仕事に対する愚直なまでにまっすぐな意思でした。バーテンダーはただお酒を作って提供していればよいわけではなく、バーというひとつの空間をどうしていくべきかも考えなくてはならない。このような視点を山﨑さんには茶道の話などを取り入れながら分かりやすくお話しいただけたおかげで、私自身も非常に学ぶものが多い時間となりました。
そして皆さんも感じているであろう山﨑さんの向上心といろんなことにチャレンジしていく精神は我々も見習わなければならないものだと素直に感じました。私も近々茶道に挑戦してみようかなと思っています!
末筆ながらこのような機会をくださった山﨑さんには深く御礼申し上げます。
(記事 河合 佳祐)
〇BAR GOYAの詳細
・住所
東京都中央区銀座6丁目4-16 花椿ビル2階B2号(小路)
・営業時間 16:00〜23:00
※グループでの御来店は5名様迄とさせていただきます。
・定休日
木曜・日曜定休(その他臨時休業有り)
・アクセス
東京メトロ銀座線、丸ノ内線、日比谷線
C3出口より徒歩3分
JR有楽町駅、JR新橋駅銀座口より徒歩8分
・公式HP
https://bargoya-ginza.com/
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