バーへようこそ#5 東京・銀座 BAR Sherlock 英国の風を銀座に吹き込む名バーテンダー

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バーへようこそ#5 東京・銀座 BAR Sherlock 英国の風を銀座に吹き込む名バーテンダー

こんにちは!Bar compass編集部の河合です。
第5弾は東京・銀座の「BAR Sherlock」(バーシャーロック)さんへ。

シャーロックと聞くとあの名探偵を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?ご存じイギリスが世界に誇るシャーロック・ホームズです。そんなシャーロック・ホームズの世界観を取り入れたバーがこのBAR Sherlockさんです。

今回はBAR Sherlockのオーナーバーテンダーである吉本 武史(よしもと たけし)さん(以下、吉本さん)にお話をお伺いしました。

今回も吉本さんのバックグラウンドやBAR Sherlockのこだわりなどについて詳しくお話を伺いましたので記事にまとめさせていただきました。まずはBAR Sherlockのおすすめカクテルからお楽しみいただけますと幸いです。

第2弾も同じく銀座のバーを取り上げておりますので併せてご覧ください。

BAR Sherlockのおすすめカクテル

吉本さんのオリジナルカクテル「シャーロック」

第40回全国バーテンダー技能競技大会に出場した際に吉本さんが創作したオリジナルカクテル「シャーロック」。吉本さんにとって思い入れのあるカクテルで、このカクテルが店名のBAR Sherlockの由来のひとつにもなっている。

No.3ロンドンドライジンをベースにマスカットリキュールのミスティア、グリーンバナナシロップ、ルクサルド マラスキーノ、ライムジュースを合わせてシェイクして作るカクテル。

ジンベースということもありキレのあるカクテルだが、グリーンバナナシロップなども使われているため優しさも同時に感じることのできるとてもバランスのいいカクテルに仕上がっている。


バーテンダーを志したきっかけ

「大学のアルバイトでバーの世界に入ったのがきっかけでした。」

大学時代は地元・福岡県で生活をしていた吉本さん。実は理系かつ教員免許をとる過程であったため、授業数が多かったこともあり、深夜のアルバイトをしようと考えた。そしてその中でも姉の影響もありバーという世界への憧れが強かったという。
結果的に博多・大名のバーで4年間勤め続け、大学を卒業してからもそのままバーテンダーを続ける決断をした。

「教育実習まで行きましたが自分には教員は合ってないと感じました。バーテンダーとしてお客様に接するほうが魅力的だと思った自分がいましたね。」

さらにバーテンダーとしての腕を磨きたいと思い上京を決意するに至ったが、この決断を後押ししたのは3か月間のヨーロッパ放浪の旅だった。

「やはりお酒にとにかく興味があったので知識としてたくさんのことを蓄えたいという思いがありました。初めての海外で超貧乏旅行でしたが、自分にとってとても刺激になりましたね。特にロンドンに対してはファッションや音楽の観点でも憧れがあったので、とにかくロンドンにいきたいという思いが強かったです。実際にロンドンではビール、スコットランドではスコッチウイスキーを実際に飲んで知識を得るということができました。そして海外の大都市を見たからこそ東京で修業してみたいと思いましたね。」

ホテル西洋銀座での経験

上京してからはかつて銀座一丁目に堂々と君臨した一流ホテル「ホテル西洋銀座」で働き始めた吉本さん。最初は正社員としての雇用ではなく、アルバイトとして働き始めたという。

「ここではバーテンダーの勉強だけでなく、レストランやワインの勉強もすることができたのがすごくよかったです。特にレストランサービスでは、サービスの全体像を知ることができましたし、バーテンダーではなかなか経験することができない部分でした。」

そして業務の傍ら4~5年目でバーテンダー協会の技能競技大会に出場を始めた。ちょうどその頃から吉本さんは「大会にのめり込む」とともに現状において限界を感じてしまった。もっとレベルアップをしたい、もっと様々なことを勉強したい。そういった思いが日に日につのっていった。

「同じ銀座一丁目のバーオーパさんの大槻(健二)さんに練習を見てもらったりもしていました。それにちょうど同じ頃に勝亦(誠)さんが世界大会に出場した時期でもありました。そういったご縁もあってバーオーパから勝亦さんが4丁目で独立するというときにお声がけをしていただきました。」

この時、大会で優勝したいという強い思いが吉本さんを動かした。ホテル西洋銀座に勤め始めて6年目のタイミングで勝亦さんがオーナーバーテンダーとして活躍するバーフォーシーズンズへの移籍を決めた。

ホテルのバーから町のバーに移籍することでのギャップはなかったのだろうか。
吉本さんはホテルから町のバーに移籍するとき以上に、博多のバーからホテルのバーに入ったときに感じたギャップが大きかったと語ってくれた。特にホテル西洋銀座は超高級ホテルかつ会員制のバーだったので、金銭感覚がまったく町のバーとは違ったという。またバーテンダーとしての働き方も異なっていた。

「ホテルではバーテンダーとしての仕事だけでなく、他のホテルの仕事も含めたオールマイティな仕事をすることが求められていました。自分も辞めるちょっと前の段階でそろそろ他の部署に異動なんじゃないかという話が出ていました。やはり自分はバーテンダーとしての仕事を貫きたかったですし、いつか独立したいという思いも思っていたので町のバーへの移籍を決めた部分もあります。

吉本さんは大会優勝に向けて、独立に向けてバーフォーシーズンズでさらなる飛躍を遂げていく。

※ホテル西洋銀座は2013年に惜しまれつつ26年の歴史に幕を閉じています。

バーフォーシーズンズでの吉本さん

第41回全国バーテンダー技能競技大会で優勝した際に吉本さんが創作した
オリジナルカクテル「ボニータ~美しい人~」

オープニングからバーフォーシーズンズの営業に関わった吉本さんは、カクテルを作る技術はもちろんバーがどう成り立つのか、そして改めてバーテンダーとはなんぞやといった部分をオーナーバーテンダーの勝亦さんから学んだ。
大会に向けても勝亦さんが大会の優勝者であったこともあり、重点的にポイントを叩き込んでもらえたという。しかし、すぐに優勝することができたわけでなく、第41回全国バーテンダー技能競技大会で優勝を掴んだのはバーフォーシーズンズに移籍してから約8年目のタイミングだった。この約8年間、いかに吉本さんは高いモチベーションを保った状態で大会に挑み続けたのか。

「とにかく負けず嫌いなんですよね笑 」

勝つまでやりたいという思いが強かったという吉本さん。クールな印象とは裏腹な熱い部分を吉本さんの言葉から感じることができた。

この大会での優勝後、バーフォーシーズンズを約10年勤めあげ、ちょうど40歳の節目で独立を果たすこととなる。

「銀座で独立してバーを出すとなると、30代だと客観的に見てもちょっと早いなという印象があります。だいたい皆さん40歳前後で独立される方が多いです。優勝は早くしたかったですが、しっかりと勉強をさせてもらって40歳で独立を果たすことをできたというのは結果的にすごくよかったなと思います。結果的にですけどね笑 」

そしてここで吉本さんの銀座という街に対する思いも垣間見えた。
独立をする際に考えた土地は銀座か地元・福岡だったという。吉本さんはいつもお世話になった銀座のお客様とお付き合いを続けていきたいという思いが強かった。

「あとは銀座の街の魅力がすごくあると思います。素敵なお客様が多いですし、街の雰囲気とお客様の雰囲気からいいバーを作りやすい土地柄なのかなと思っています。7、8割はお客様がバーの雰囲気を作るので。」

いいバーを作っていきたい。そういった吉本さんの強い思いが感じられた。

「ボニータ~美しい人~」の紹介

テキーラをベースにピーチリキュール、パッションフルーツリキュール、アマレットシロップ、ライムジュースを合わせてシェイクをして作るカクテル。
先ほどご紹介した「シャーロック」がキレのある男性的なカクテルであるのに対し、こちらはフルーツリキュールをふんだんに使った女性的なカクテルに仕上がっており非常に飲み口が柔らかい万人が楽しめるカクテルとなっている。
ラディッシュで作ったガーニッシュ(グラスの装飾)もとてもキュートで素敵だ。

ボニータとシャーロック


BAR Sherlockのこだわり

ホームズの部屋に入室するような感覚を覚える入り口ドア

上京前のヨーロッパの旅でフランスやベルギーなど様々な国を巡った中でもイギリスの雰囲気には特に惹かれていたという吉本さん。雰囲気としては英国調のバーがいいなという思いは独立前からなんとなくあったという。また優勝カクテルではないが、大会に出場した際のカクテルで「シャーロック」という思い入れのあるカクテルがあった。バー「フォーシーズンズ」も実は勝亦さんが大会で優勝した際のカクテル名を由来に名付けたものだったため、「シャーロック」という店名もありかなという考えもあった。

結果的に「BAR Sherlock」としてオープンをするに至ったが、シャーロック・ホームズという世界中誰もが知っている探偵の名を使用したこともあり、コンセプトのぶれが少なかったという。

「自分は理系だったこともありあまり小説を読むことが好きではなかったので、小学生の頃からシャーロック・ホームズを読んでいるということはありませんでした笑 実際シャーロック・ホームズ=ロンドンという認識を強く持ったのは、自分がロンドンに行ってからです。帰国後に本格的にシャーロック・ホームズを読み始めましたが、この時代のロンドンがすごくかっこいいと純粋に感じました。」

そこでBAR Sherlockの店内はスケルトンの物件であったこともあり、王室っぽくデザインするバーが多い中、ホームズとワトソン博士の「部屋」をイメージしてデザインしたという。特に壁の色合いは他のバーにはないもので、窓も円形の特殊なものだ。

「常にシャーロックであったらどっちだろう、という観点でチョイスをしていきました。店内に流す音楽だってジャズではなくクラシックを選んだりしています。人ってずっと同じ気持ちでいることって難しいので、いつのまにか洋が入ったり和が入ったりしてしまいます。お店の雰囲気に統一感があったほうがこのお店にきた理由のようなものが感じられると思います。

カクテルはもちろんお店の雰囲気も楽しむことができるのがBAR Sherlockの大きな魅力のひとつになっている。

若者がいかにバーを楽しむか

BAR Sherlockの客層は非常に幅広い。平均すると40代のお客様が多く、ずっと吉本さんがお世話になってる年配のお客様もたくさんいらっしゃるが、中には大学生の女性がひとりでいらっしゃることもあるという。インスタグラムなどのSNSでもBAR Sherlockの投稿は目にすることが多いが、なぜ皆BAR Sherlockに足を運ぶのか。吉本さんの視点でお話を伺った。

やっぱりシャーロックという名前の効果はあります。シャーロック・ホームズが好きということで来てくださる方は、バーに憧れがあるけどなかなか行きづらい、でもシャーロックというコンセプトなら行ってみようかなという気になるのかなと思っています。
 若い人がうちに来るとなぜうちを選んだんですかって聞くこともあるんですが、中には『名探偵コナンが好きなんです』って方もいました。20代前半たちには価格も高いだろうなと思うところはありますが、またリピートくださる人もいるので、バーの持つ価値観を楽しんでくれているんだなと思います。」

お店の雰囲気づくりとしても若い方に来てほしくない、とはまったく思わないという吉本さん。国籍や老若男女問わずどういう飲み方をしているか、がバーの雰囲気づくりには大切になってくる。

むしろ今や若者も上手にお酒を楽しんでいる方が多いのではないか、と吉本さんはいう。上司に誘われてお酒を飲みに行くという文化も廃れてきているため、若者自らが自分の好きなお店をネットで探してお酒を飲みに行くようになっている。そうなると、一杯一杯に対する向き合い方がより丁寧になり、バーテンダーがやろうとしていることを理解しようとしてくれるお客様が増える。
バー側としてもこの傾向は楽しみだ、と吉本さんは笑顔で語ってくれた。

BAR Sherlockには若手のスタッフの方も数名いらっしゃる。
吉本さんはすべての仕事の根本は同じ、それをバーテンダーという仕事を通じて学んでほしい、と考えている。お客様をはじめ多くの方に自分が教えていただいたことを次は若者たちに伝えていくことも吉本さんは意識的に行っている。

バーが気になっていてシャーロック・ホームズの世界観も好きだ、という方にはぜひ訪れていただきたい。きっとこれまでに経験をしたことがない素敵な時間を過ごせるはずだ。


吉本さんの今後について

「自分が何をしたいからどうするじゃないんですよね。」

常にお客様が何を求めていらっしゃるのかに寄り添うのが私の仕事、と強く吉本さんは語ってくれた。様々なお客様がいらっしゃるのでいろんな思いに応えていかなければならない。自分本位ではなく常にお客様本位で。分かりやすさなども追求しながらバーの魅力をお客様に伝えていきたい、という。
今後の吉本さんの活躍から目が離せない。


編集後記

今回は吉本さんから多くのお話をお聞かせいただきました。

日本一バーが集まる地域といっても過言ではない銀座で活躍する吉本さん。シャーロック・ホームズの世界観を取り入れたバーの雰囲気はもちろんすばらしいものですが、一番はよい空間をお客様に提供するために絶え間ない努力を続けている吉本さんの姿に私も魅了されました。また見た目はクールで本当にイケメンな吉本さんですが、時折見られる熱い部分が九州男児っぽさを感じることができ私は大好きでした笑

若者がお酒をいかに楽しむかという切り口でもたくさんのことを語ってくださり、私自身本当に勉強をさせていただきました。

末筆ながら16時開店にもかかわらず、お忙しい開店前の時間帯に快く取材を引き受けてくださった吉本さんに心より深く御礼申し上げます。

(記事 河合 佳祐)

〇BAR Sherlockの詳細
・住所   

 東京都中央区銀座6-9-13
 第一ポールスタービル5F
・営業時間

 月~金 16:00~25:00
 土・祝 16:00~23:00  
・定休日  

 日曜日
・アクセス 

 東京メトロ 銀座線、日比谷線、丸ノ内線銀座駅より徒歩3分
 JR新橋駅より徒歩7分

 JR有楽町駅より徒歩9分
・ホームページ
 https://www.bar-sherlock.jp/

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